9.何故スラムダンクは面白いのか その2


  漫画作品が長期化していくと「○○編からは面白くないんだよな〜」という現象に見舞われるが
  一体何故、この様なことが起こるのだろうか?
  名作走り屋漫画「頭文字D」を例に説明してみよう。

  頭文字Dで最も面白い部分といえば、最序盤の『秋名編』で間違いないだろう。
  何故かというと、以下のようなギミックが見事に噛み合っているからだ。

  1「池谷らスピードスターズの地元の走り屋としての意地」
  

  2「AE86、拓海に対する見くびり、評価の低さ」
  

  3「実力を認めながらも自信とプライドに満ちた対戦相手と、主人公拓海との対比」
   

  4いち早く、拓海の実力を見抜く猛者
  


  拓海のスーパーテクによって、型遅れの86が最新のスポーツカーを追い上げ
  これらのギミックが一気に動き出す様は、まさに「最高」というのが相応しいものとなっている。
    


  だが、話が進むに連れて「秋名のハチロク」として名が上がっていくと、これらのギミックも徐々に弱くなっていき
  強豪チームに加入して以降の「プロジェクトD編」に至っては、全て消え去ってしまい。
  (一説にはTOYOTAから懇願されて続けたともされる)「プロジェクトD編」は、第1部と比べ評価の低いものとなっている。


  このように、どんなに良くできたギミック構造も、原則として途轍もない消耗品であるのだが
  だからといって、無理にギミックを維持しようとすれば「登場人物が全く成長しなかったり」
  「周囲の人間が白痴化」したり「出来のいい刃森漫画」になってしまったりするのである。

  つまり、ギミック構造の消耗こそが、長期化した漫画の「○○編は面白くない」という原因なのだ。


  では、もし仮に消耗することのないギミックを搭載した長期連載漫画があれば、
  その作品は「○○編は面白くない」の呪縛から逃れることができるのだろうか?


  この一見無茶な疑問に答えてくれる作品が再びのSLAM DANK』である。

  スラムダンクは「○○編が面白くない」という。
  ドラゴンボールにもワンピースにもある欠点がない漫画といえる。
  (※初期のコメディタッチの作風をことさら低く評価する層がいることはいる)

  もちろん、山王戦終了直後という物語の最高潮で連載を終了したというのもあるのだが、
  スラムダンクが異常なまでに安定して面白いのは、実のところ超良くできた設定の中にある
  永久ギミックによるところが無関係ではないのだ。


  永久ギミックとは……
  『ストーリーを進める中で、何度も出てくるアクションに対して、
  『通常のリアクションとは別に、対比的なリアクションを発生させることのできる構造』のことである。


  まず、スラムダンクのメインストーリーといえば、湘北高校がインターハイを戦っていく話であり。
  トーナメントである以上、話の進行として勝ち進んでいく必要がある。

  そうした時、エースである流川が活躍するシーンというのは、必然的に出てくるのだ。

  そして、流川が活躍すると、必ず『嫉妬する桜木』という、対比的かつ自然なリアクションが引き出される。
  これは、ひとえにスラムダンクの設定が本当に良くできているからなのである。

  このように設定を作る段階において、メインストーリーを進める上で、何度も出てくる展開

  つまり、スラムダンクでいう流川が点を決める。頭文字Dでいう、ハチロクが相手の車を追い上げる、抜く。
  といったストーリー中の
  繰り返し出てくるシーンに、自然で対比的なリアクションを用意できれば
  何十倍も効率よく安定した面白さを維持し続けるることができるというわけなのだ。

  今度。設定を練る時には、メインストーリでよく出てくるアクションに注目してみて如何だろうか?


  今回で、ギミック理論について一通りの説明が終わったので、
  次回から、恥ずかしながらギミック理論を応用しながらオリジナルの漫画を描いてみます。


  10.実践編へ続く

  11.全盛期の松本人志だけが到達したデュアルコアのボケとは



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