6.物語を面白くする黄金パターン


  
リアクションの種類から面白さを数値化し、低い場合はtGPを増やしてリアクション重複に気を付ける。

  以上がここまで語ってきたギミック理論の全てであるが、これだけでは創作する際に最も重要となる「どうすれば
  面白くなるか?」という問題に対し、実践性に欠けていると言わざるを得ない。

  そこで、実際に例を挙げてギミック理論を使ってみよう。

  下の画像は、ジャンプで連載されていた『あっけら貫刃帖』(全2巻)の第一話における
  「キモイ子供が茶屋でくつろいでいる」シーンである。

   

  このシーンのtGPを算出すると
  「キモイ子供が茶屋でくつろぐ」という
アクション(右ページ)に対し
  女中と町人が「食う量が多すぎて、引く」という
リアクションが起こっている。(左上ページ)

  1つの
アクションに1つのリアクションが重複しているから、このシーンのtGPは『0,5tGP』ということになるが、
  これは数値としては最低に近い。

  しかし、なぜ数値が低いといけないのだろうか? それは以下のような理由があるからである。


  〜tGPが低いと発生する問題〜

  @話が進まない
  tGPが『0,5』ともなると、とにかく感じるのが「タルい」ということだ。
  右のページをまるまる使って、茶を飲ませた挙句。そのオチが「食い過ぎィ!」という、
  余りにつまらないものな上にあろうことか、
  その滑ったネタをもう一度やるという愚行まで犯している。

  作者としては、この子供が大食漢でのんびりした性格だと表現したかったのだろうが、
  2P弱も使って話が一切進んでいないというのは、作話として致命的であり。
  はっきり言って
この茶屋のシーンは読み飛ばしても何ら問題がない。

  限られたページ数でこんなことをしては、ストーリーの密度は薄くなるし、話が進まないから当然テンポも悪い。
  となれば、見切りの早い人が読み飛ばばしても何ら不思議ではないだろう。


  A説明的になる(感情移入できない)
  効果的に話が進められずテンポや密度が低下する時、多くの場合。
  説明的になるという問題が一緒に発生する。

  右のページなどが、まさにそうだ。
  このシーンには「子供が茶を飲んでいる」以上の意味が全く存在しない。

  絵がめちゃくちゃ上手いだとか、カワイイとかならイザ知らず。
  知りもしない微妙に気持ち悪いキャラが、ただ茶を飲んでいるだけの映像を見せられて、
  果たして、あなたは感情を揺り動かされるだろうか? 答えはNOだ。


  残念ながら、低tGPにおいては「描写されている事実」以上のものを心で感じることは、非常に稀なのである。


  ここまで偉そうなことを書いてきたが、このようなダメ出しだけなら、それこそ何の意味もないのである。
  重要になのは「tGPはどうやって上げるのか?」「上げて本当に良くなるのか?」とうことだからだ。

  そこで上のシーンのtGPを実際に上昇させてみよう。
  というのも、tGPを上げるのには、ものすごく単純かつ確実な方法が存在するからだ。

  それが
対比的な人物リアクションをさせる』ことである。

  つまり、右のページのように「キモイ子供が茶屋でくつろぐ」というシーンがあった時。

  「キモイ子供が茶屋でくつろぐ」という
アクションに対し、女中や町人リアクションさせるのではなく。
  「くつろぐ」対比となるような、例えば「真剣に悩んでいる」ような人物に
リアクションをさせるのだ。

  そこで左ページの左下に注目して欲しい。なんと、神妙な面持ちで歩く若侍がいるではないか。


   

  実は、この青年は山本青葉君といい。先日、巷を賑わす辻斬りによって斬られた父の仇を討つべく
  町中を探し回っているが、一向に見つからず途方にくれているのだ。

  この「呑気にくつろぐ子供」と「思い悩む青年」自体は、相性が良く。いくらでも良くなるポテンシャルを秘めている。
  問題は2つを上手く絡めることのできない構成にこそあるのだ。


  では実際に、このシーンのtGPが『2』になるように構成を変更してみよう。

  ・まず、山本君を先に登場させる。

  
        ↓
  ・茶屋の外観カットを入れる。
  
     ↓
  ・茶屋でくつろぐ子供のシーン(ぷい〜天気の話はカット。ここまでで1ページ)

  
   次のページ
      ↓
  ・食う量に引く女中。歩いてきた山本君がチラ見する。(町人のセリフは重複するのでカット。というより、いなくていい)

  
      
  ・天気のいい真昼間に子供がいっぱい菓子を食う平和な光景を見てセンチになる山本君。

  
      ↓
  ・思わず辻斬りに殺された父親のことを思い出してしまう。1〜2コマ(ここまで2ページ)


  比較用

  tGP「0,5」
   


  tGP「2

  


  個人ごと好みは異なるので絶対とはいえないが、tGP「2」と「0,5」を比べた時。
  「2」の方が展開に無駄がなく登場人物が有機的に絡んでいるのがわかるだろう。

  これは単に天気の話をカットしたからではなく。
  「対比的な人物に
リアクションをさせた」ことによるものである。

  長い説明は省くが「対比的な
リアクション」には、
  「説明感を薄める」「短い描写でも(対比により)キャラや感情を際立たせる」といった効果がある。

  それが結果として「テンポの良さ」や「生き生きとしたキャラクター」へ繋がり
  ひいては「面白い」ということになるわけである。

  だが、tGPを上げる利点は「面白さがUP」することだけではない。
  というのも、tGPは上げると「悪い部分が勝手に浮かび上がってくる」という特徴もあるからだ。

  物語を面白くする上で最も困り物なのが「面白くする」という行為が漠然とし過ぎている点にある。

  しかし、
アクションに対するリアクションを増やし、
  tGPを上げると「面白くする」為の明確なゴールを設定することができる。
  その為「どうすれば面白くなるか?」ではなく「その
リアクションまで、どうすれば自然な流れで持っていけるか?
  という一種のパズルを解くように面白くすることができるのだ。

  下の画像は、茶屋のシーンの直前のページであり、
  エピローグ後の『あっけら貫刃帖』における実質的な本編最初のページである。


  

  このシーンでは「辻斬りの恐ろしさや妖怪の可能性」を
  町人の会話で説明するという不細工な手法がとられており、お世辞にも褒められたものではないが、
  山本君を使いtGPを上げることで
          ↓
  @リアクションをさせる為に、山本君を前もって登場させる必要がある。
          ↓
  Aさらに対比的なリアクションをさせる為には、山本君が悩んでいることを分からせる必要がある。

  といったように、修正の道筋が見えてくるのである。

  なので、@を満たすため、山本君を先に登場させる。

  

  さらに、先の町人の会話風説明シーンもAの条件満たせるよう
  「町人が噂話をする」シーンから「山本君が辻斬について町人に尋ねている」シーンへ変更する。
  といった改善案が、tGPを上げただけで半自動的に浮かび上がってくるのである。

 

  というわけで、もし物語の作成が、どうしても上手くいかなかったら
  『対比的な人物にリアクションさせてtGPを上げ、自然な流れになるように前後を調整する』
  という、ギミック理論の
物語を面白くする黄金パターンを試してみては、どうだろうか?


  7.ワンピース史上最大の失敗へ続く

  
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